棚田とは
棚田とは、山の斜面や谷間の傾斜地に階段状につくられた田んぼのことをいいます。斜面に田んぼが重なっているようすが、「棚」に似ていることから棚田と言われるようになりました。平地の田んぼと違い、棚田では田んぼ1枚1枚の大きさが小さく、いろいろな形の田んぼがあります。山の多い日本では、さまざまな地域で棚田をみかけることができます。
「棚田」という言葉は和歌山県から!?
「棚田」という言葉は、1406年に書かれたふるい文書(高野山文書のひとつ)に、初めて出てきます。
棚田の役割
棚田は、お米をつくるだけではなく、たくさんの役割を持っています。このたくさんの役割は、棚田の「多面的機能」と呼ばれています。ここでは、棚田の多面的機能の一部を紹介しています。
1.私たちの食べものをつくる
棚田では、私たちの生活に欠かせないお米をつくっています。山間部にある棚田は、昼と夜の温度差が大きく、水のきれいな水源が近いので、甘くて美味しいお米をつくることができます。
2.水をためる
棚田は、雨水をためることができるため、ダムのような役割を果たします。大雨の時に洪水が起きるのを防いでくれたり、たまった水は時間をかけて川に流れていくので、雨が降らない時でも水を安定して供給してくれたりします。
3.土砂すべりなどを防ぐ
土砂すべりは、地下を流れる水が増えることで起きます。棚田は水をためることができるため、大雨の時に地下の水が急にふえることを防いでくれます。
4.たくさんの生き物のすみかになる
棚田には、水場となる田んぼや畦の草地、周囲には森林や民家など、さまざまな環境があります。環境によって生息する生き物が変わるため、いろいろな環境がある棚田は生き物が多く生息しています。
5.伝統文化を引き継ぐ
棚田は、田んぼの大きさが小さく、道も狭いため、人の手でお米づくりが行われてきました。その中で地域ならではのお祭りや歌などが作られていき、棚田はそれらを次世代に引き継ぐ場にもなっています。
6.自然と触れあい、心がいやされる
棚田の美しい景色を見たり、農作業で自然と触れあうことで、心がいやされたり、リフレッシュしたりすることができます。
7.たくさんのことを学ぶ場になる
1~6で紹介したように、棚田にはたくさんの機能をもっています。棚田に来ると、たくさんのことを見たり、聞いたり、感じたり、いろいろなことを学び、体験することができます。
荒廃する棚田
たくさんの役割をもつ棚田は、今減ってきています。その理由として、田んぼまでの道路が急で狭いため、大きな機械が入ることができません。そのため、棚田で耕作を行うにはたくさんの人手が必要になってきます。しかし、棚田地域では、過疎化・高齢化が進み、農家だけでなく、住民がいなくなる地域が増えており、耕作されなくなった棚田が増えつつあります。
棚田保全に向けた取り組み
耕作されなくなった棚田が増える一方で、棚田の多面的機能が見直され、棚田を守ろうという取り組みも始まりました。1999年には、棚田を守る取り組みを広げたり、農業などについて知ってもらうことを目的に、「日本の棚田百選」が選ばれました。その後、2022年には、棚田の活性化に取り組んでいる地域を、改めて「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」に認定しました。2022年時点で271の棚田が認定されています。